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 bookwordrobe​ は、服をつくる本屋の名前。

 本棚の間を抜けたところ、ある街の本屋の片隅で、ひとりの女が小さな椅子に腰掛けている。その隣には数枚の服と、さらに小さな本棚が並ぶ。女が手元の文庫本に目を奪われている内に、私はそっとハンガーラックの端にかけられた服を手に取った。柔らかく私の手にとろけてしまうかのような布、甘い香りさえする。その服に括り付けられた値札(ひどく小さな文字で書かれた)をみると、この服の材料とされた布すべてが文学世界から輸入してきたものだと記してあるではないか!_______

 

  昨夜、服に包まれて渡された本が、必然だったかのように私の本棚に並んでいる。かつて書物が独占してきた「文学の輪郭」の一片をこの服が奪った。棚に収まった書物の存在が、記憶の呪縛を解くように、この服もまた人間に安心感を与える。

 

 本棚の間を揺れ動く時、あなたの手がページを捲る時、この服は身体を決して邪魔しないだろう。緩やかに動くone piece-dressは、自己とその他を隔てる身体の輪郭すら忘れさせ、意識していた周囲事物との関係性をも肯定的に切断する。

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